公募研究

Publicly Offered Research

領域略称名クラスター細胞学
領域番号24A302
設定期間令和6 (2024) 年度~令和10 (2028) 年度
領域代表者深川 竜郎
所属機関大阪大学大学院生命機能研究科

本領域の公募説明の動画をアップしましたので、ご参照ください。

領域の概要

細胞内では、タンパク質が集まって形成される分子複合体、さらに、それらが高次にクラスター化した「超分子複合体」が、さまざまな構造や機能をつくりだしている。
近年、クライオ電子顕微鏡 (EM) 等の構造解析技術の進歩に伴い、試験管内で再構成した分子複合体の構造を明らかにしようとする研究が盛んになされているが、このような研究のみでは「複合体が細胞内でどのように機能するのか」という理解に至らないことが少なくない。その理由として、試験管内でできる複合体は、細胞内で機能する超分子複合体の全体像を捉えていないことや、生化学的に安定した複合体は細胞内での動的構造を再現していないこと、さらに、試験管内で形成される無秩序な集合体は、組織だって形成される超分子複合体を再現していないことなどの要因が挙げられる。
そこで、本領域では、細胞内の時間的・空間的な条件に応じて形成される、機能的な「超分子複合体」を “バイオロジカルクラスター”と定義し、その実体を捉え、形成機構および機能特性を明らかにし、いかにして細胞内機能を生み出しているのかを理解することを目的としている。
計画研究では、動原体、セントロメア、染色体、中心体を構成する超分子複合体に焦点を当てるが、公募班ではこれに限定せず幅広く細胞内で形成される超分子複合体を研究の対象とする。そして、対象とする超分子複合体について、その超微構造や分子動態の解析、物理量の測定と理論、計算科学を発展させ、これらのアプローチが連動する組織的な研究体制を構築する。そして、多様なバイオロジカルクラスターが形成される機構、また、その獲得される特性と細胞内機能との関連を明らかにしていくことで、バイオロジカルクラスターという新たな細胞観の確立を目指す。

公募する内容、公募研究への期待等

研究項目A01では、各種の超分子複合体について、その基本ユニットの分子基盤から超分子複合体の形成制御と獲得特性、そしてそれらの細胞機能との関連までを解明する。計画班では、動原体複合体、SMC複合体、CPC複合体、中心体を扱うが、公募班では、これらにとらわれず広く細胞内の重要な超分子複合体を対象とする研究を歓迎する。例えば、転写・複製などに関わる核内の超分子複合体、各種オルガネラ、細胞膜や核膜の機能に関わる超分子複合体などが想定される。また、神経細胞、老化やストレス応答、疾患など、特殊な環境下で機能する超分子複合体に関する研究も対象である。

研究項目A02では、先進的な高精度イメージング解析を中心として細胞内の超分子複合体を捉えて、その特性と分子動態制御を解明する。例えば、クライオET(電子線トモグラフィ)、超解像イメージングに加え、原子間力顕微鏡など構造解析や形態観察の技術発展的な研究を奨励する。また、各種蛍光顕微鏡に適用可能なプローブの開発、NMR解析、クロスリンク質量分析、重水素交換質量分析や計画研究では想定していないような新規技術の開発、新しい方法論の導入など超分子複合体を解析するための技術開発的要素を含んだ研究が期待される。

研究項目A03では、超分子複合体に関する物理量の計測、これを取り込んだ数理学的な理論解析を並行して行うことでクラスターの機能特性や形成に関与する要素を解明する。特に、細胞内環境を模倣したシミュレーションに基いて複合体の形成を説明しようとする研究、デバイスや特殊な方法論を用いて細胞内環境を再構成する研究、連続体力学の立場から超分子複合体の物性を記述する研究などを想定している。また、細胞生物学に応用しうる物理理論の実証を試みる研究提案も歓迎する。

公募班の研究は、計画研究と相補的であり共同研究等により相互発展的な研究が推進できるものが期待される。実験系では単年度あたり500万円を上限とする研究、300万円を上限とする萌芽的な研究を採択する。また単年度あたり300万円を上限とする理論的な研究の採択を見込んでいる。

公募する研究項目、応募上限額、採択目安件数

研究項目番号研究項目名応募上限額
(単年度当たり)
A01バイオロジカルクラスターの分子基盤と細胞内機能との関連解明実験系の研究: 500万円
(採択目安件数:10件)

萌芽的な実験系の研究及び理論系の研究: 300万円
(採択目安件数:7件)
A02バイオロジカルクラスターの可視化と分子動態制御基盤の解明
A03物理・数理学解析によるバイオロジカルクラスターの形成と特性の解明